2018年03月08日

両備バス廃線問題について。

最近、岡山県のあるニュースが話題を呼んでいます。
それは、両備バスが打ち出した、「赤字バス路線を31路線廃止する」という、前代未聞の措置。

「地域住民の足」を揺るがす、この大問題について、私はケアマネの立場から、少し私見を述べたいと思っています。

この問題の概要を簡単に。

かねてより、低価格均一運賃で岡山市内の既存事業者と競争関係にあった岡山市中心部の循環バス「めぐりん」。
両備グループの主要幹線である西大寺線と全く同等の路線営業を中国運輸局に申請し、それが認可される見通しとなった。
現在、西大寺と岡山駅を結ぶ両備バスの路線は、始点から終点まで運賃およそ400円。
対してめぐりんは、定額運賃250円で運行を予定している。

そもそも、この両備バス西大寺線は、もともと軽便鉄道と呼ばれる、鉄道路線の代替え手段だったもの。
国鉄赤穂線の開業に伴い、競合を避ける意味で、もともと子会社であった両備バスが路線開業に至ったものだそうです。

言うなれば、両備バスのアイデンティティとも言える、この西大寺線。
町の発展とともにあった、というよりむしろ町の発展を支えてきた、という自負のある「ドル箱路線」に、ポンと低価格事業者の新規参入。
だからこそ、怒りを抑えられなかったのでしょう。

そして、「全国の地域公共交通を守るために、敢えて問題提起として赤字路線廃止届を出しました」とする、両備グループ代表、小嶋光信氏のメッセージは以下のようなものです。

「現在、日本のバス事業者の8割は赤字、電気軌道事業所の7割以上が赤字の供給過剰の状況にあります。皆さんご存知のないことで驚かれるかと思いますが、両備バスは3割の黒字路線で7割の赤字路線を、岡電バスでは4割の黒字路線で6割の赤字路線を支えているのが現状です」
とあります。

赤字を抱えながらも、民間の努力によって継続されている赤字バス路線。
安易に採算が取れそうだからといって、過当競争を招く新規事業者の参入を許せば、赤字路線を維持する余裕が無くなる。
だから、問題提起として赤字路線の廃止を提起した、という。

こういう新規参入を、「クリームスキミング」というそうです。
端的に言えば、“美味しいとこ取り”ですね。
大手航空会社のドル箱航路に、LCCが参入するのと同じようなもの。

ここまでの話をまとめれば、「めぐりん」は明らかに悪者ですね。
儲かるからって、両備バスのバス停の真横に、わざわざめぐりんのバス停を建てるなんてのは、やり過ぎな気がします。
わざわざ供給が十分ある路線に参入するのではなく、「買い物」「通院」「役所」「学校」など、地域ごとの生活基盤に密着する場所を循環するような、まさに「めぐりん」の名前が示す通りのコンパクトな路線展開こそが、社会的要請であろうと考えますから。
つまり、既定路線に入り込むのではなく、地域を循環する路線図が敷かれていない地域は、岡山市内にもまだまだたくさんあるじゃないか、と僕は思うわけです。

ただ。
バスを利用者する、住民の立場としてみれば。
安くバスに乗れた方が良いに決まっている。
そして、行政の立場として、本当に“安易”に新規参入を許したのか、というところに、私はこの問題の本質があるような気がしています。

さて、ここで少し視点を俯瞰して。
僕が疑問に思う、二つのポイントについて述べたい。

まずひとつは、どうして路線バスのサイズは一定なのか、ということ。
もうひとつは、両備タクシーはなぜ介護事業から撤退したのか、ということ。

1点目は、バス会社の人に聞かないとわかりませんが。
2点目は、ケアマネとして、いろいろ思うところがあるのです。
その当時、介護タクシーについては、制度の定めとの齟齬があり、問題が指摘されていましたからね。

そんな中。
地域で最大規模のタクシー事業者である同社が、介護事業から撤退した。
移動弱者である要介護者に与えた影響は、とても大きかったことは、言うまでもありません。

その時の背景にあった問題と、今回の廃線にまつわる問題は、根を等しくする問題であるように僕には感じられます。
憶測で述べるのが良いかどうか、ということもあるので、これ以上は申しませんがね。

さて、ここからが、今回の問題に対する私個人の意見です。

まず、両備バスさんのこの度の対応について思うこと。

…特設サイトを設けて、企業努力をアピールするのなら、違う方向に努力して頂きたい。
沿線住民を人質に取るかのような、オールオアナッシングの手段ではなくて、赤字路線から撤退を表明する以上は、住民を不安に陥れないように、きちんと代替え案を提示してもらいたい。
それでこそ、公共交通を支えてきたと自負される、両備バスの社会的責任ではないでしょうか。

代替え案を提示しないのは、この行動そのものを、行政との交渉材料としているからではありませんか?
これは行政に対しての脅しであり、廃線予定の沿線に住む住民は、一企業の賃上げ交渉の人質にされた、と言っても過言では無いわけです。

そして、市民として申し上げるならば。
行政当局は、このような脅しに屈せず、それに変わる代替えの交通手段を、いち早く構築してもらいたい。
このような手段をとる会社に、大切な家族は預けられない。
そう思わずにはいられません。

マクロに見れば、自家用車保有率の向上であるとか、沿線の過疎高齢化であるとか、様々な課題が公共交通にはありました。
狭く細い既得権の奪い合いが根底にあるのだろう、という仮説も、容易に想像できる訳ですが。
そのような中で、めぐりんの新規参入という議論が進んでいるのだろう、と思うのです。

いずれにしても。
どのようにして、住民の“足”を守るのか。

そこが肝要なポイントと言えるでしょうね。
posted by メタマネ佐藤 at 22:10| Comment(1) | 日記
この記事へのコメント
この状況で両備を叩くとか信じられん
行政だけでなく岡山の住民に問題の根源がありそうですね
Posted by at 2018年07月19日 14:19
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