2012年06月04日

連載「バイステック」〜意図的な感情表出その3〜

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今回も、先週に引き続き「意図的な感情表出」。
本日の内容は、これまでの連載の中でも、特に重要と言える部分かもしれません。

それは、「援助という意図を持って、クライエントの感情表現を制限する」ということ。
一言でそのポイントを表すとすれば、それは「援助の目的を見失うな」ということなんです。

相談援助は、なんのための相談援助であるか。
それは、クライエントの抱える課題を明らかにしていくこと、または解決のプロセスを明らかにしていくことにある。
クライエントそのものを“治療”することが目的ではないのです。

こうした前提に立ち、「面接」が、クライエントの“治療”や“単なるうっぷんばらし”に陥らないように。
「面接の目的を達成する=課題を明らかにして解決する」という観点から、「感情表現を制限する」必要が生じるのですね。

言い方を変えれば。
相談援助者としての、自らの仕事にきっちり“線を引く”ということなのです。

「こっから先は、違う専門家に聴いてもらってください」とか。
「すみませんけど、その話はわかりません」とか。
自分の“仕事の範囲”を自覚する必要がある、という事なんです。

まず、この点を踏まえてから。

1、対応できる限界を踏まえて対応する。
対応できる限界には、二通りあります。
それは、援助者の対応能力と、時間的な制約。
クライエントの感情表出は、時に制御が難しい場合がありますし、専門的な治療を必要とするようなケースもあります。
そのような場合には、より適切な機関を紹介する、という対応が必要となるでしょう。
また、ワーカーはそのクライエント一人に対して専属で関わるわけではありません。
どのような機関に属しているかによっても、一人のクライエントに割ける労力というのは変わってくる。
相談対応はケースバイケースと言えども。
情緒的な問題に左右される、労力の不平等は、できるだけ平準化するように心掛けるべきでしょう。

2、気持ちの準備ができていない場合は、もう少し待ってから。
クライエントの中には、まだ気持ちの整理がついていない問題について、「話さなくてはいけない」と考えて、無理をしてしまう場合があります。
例えば、重い病気や障害の受容が、全くできていないのにも関わらず、予後を見据えた話を決めようとする場合など。
何事も、「適切なタイミングを見極める」ということが肝要です。
それを間違えると、クライエントに不要な罪障感を抱かせてしまったり、逆に援助者に対する不信や怒りを誘発する原因になったりもしますので、注意が必要です。

3、過度の依存心を引き出さない。
クライエントの中には、援助者との関係のなかに、自分の居場所を求めるような方もおられます。
我々は、いかにクライエントの自立を支えるか、という視点が重要ですから、不健康な依存心に対しては、ある意味で決然と対応すべきです。

4、クライエント自身が、注目を集めようとして、敵意をもってワーカーに接してくるような場合。
いわゆる“クレーマー”と呼ばれる人たちのなかには、自らの主張を押し通して、正当性を他者に認めさせることに意義を見出だしているような場合もあります。
そういう行動の意図は、注目を集めようとする不健康な行為であったり、ケースワーカーの態度を試すような行為でもあります。
我々は、そうしたクライエントの行動を理解しようと努める必要はあるが、そうした行動を励ますような行動は慎むべきと言えるでしょう。

…といった具合です。

バイステックがいう「感情の制限が必要なケース」の例はこの4つですが、他にも明らかに抑制が必要な状況というのはあります。
例えば、クライエントが必要以上に好悪感情を抱いている場合では、業務を超えた個人的な繋がりを求められるようなケースもありますし、逆に援助拒否といったケースも起こりえます。
感情の転移や逆転移にも、十分注意する必要がありますね。

なかなか難しいものですが、こうした情緒的な問題に対するバランス感覚が重要であることは、前述の通りです。

「援助という意図をもって、感情表出を制限する。」

奥深いです。
posted by メタマネ佐藤 at 22:55| Comment(0) | バイステック
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