2013年01月20日

メタセレクション 九龍城探訪。

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昨日はセンター試験だったんですよね。
受験生の皆さん、お疲れさまでした。

私は高校時代、センター試験を受けるような頭がなかったので、無縁の世界でした。
あまり真剣に勉強しようとしなかった、というべきか。

「四の五の言わずに頑張っていたら、どんな今があるのかな」などと思ったりします。

でもそれだと、今の自分はいないわけで。
どちらかを選ぶのならば、僕は迷わず今の自分を選ぶ。

人の縁や経験、広い意味で言う環境が、個人の人格形成に大きく影響を与える、と思います。

そんな訳で。
本日ご紹介する本は、そんな様々な人の「生き方」のリアルに接する、ルポルタージュ。

グレッグ・ジラード イアン・ランボット 著
九龍城探訪 〜魔窟で暮らす人々〜 です。

九龍城といえば。
国際都市香港に実在した、巨大なスラム街。

空港からほど近くにありながら、中国からも、イギリスからも支配を受けることがなかった無法地帯。
様々な犯罪の温床となり、「入ったら二度と出られない」と言われていた地域のことです。

しかし。

九龍城には、非合法の麻薬や犯罪だけでなく、低所得の一般的な家庭の方が多かった。
幅30センチほどの通りを挟んで、違法建築の高層アパートが立ち並び。
“劣悪”としか思えない環境のなかでも、様々な産業を興して生活を続けてきた住民たち。

この本は、九龍城の解体前に、そこで様々な営みを行ってきた住民たちに体当たりの取材を敢行し、「なぜ九龍城のようなスラムが誕生したのか」、「そこに生きる人たちは何を思って生活してきたのか」に触れる、恐ろしく人間臭い写真集なのです。

現在は解体されてしまいましたが、ありし日の九龍城の威容は、まるでひとつの要塞。
見るからに不衛生で、人が住めるとは思えないような環境で。
一時は3万人を越える人々が、ここに暮らしていたと言う。

コミュニティの中には、様々な専門家や専門店もあり。
魔窟の外に出なくても、そのなかで循環型の社会が形成されていた。

医師、牧師、清掃人、菓子製造業、喫茶店店主。

様々な立場の、様々な営みを。
その目で見てきた、九龍城を。
体当たり取材で、聞いていく。

この写真集には、そんな人々の「日々の営み」の様子がおさめられています。
それらの写真は、どれも生気に満ちていて。
人々が逞しく生きている様子が、よくわかる。

ある意味では、現代の日本人の方が、病んだ顔をしているのかもしれない。
そんな風に思わされるほど、皆生き生きとしているのです。

インタビューでは、誰しもが九龍城の解体を惜しみ。
多くの人は、その後の生活に対する不安を覗かせている。
中には、新しい環境に対する期待感を口にする人もいるけれども。

そんな人々の苦悩をよそに。
粛々と解体工事は進み。
アジアンカオスの象徴と呼ばれた九龍城は、姿を消した。

そんな、ありし日の九龍城に出会えるこの本。
なかなかディープです。
posted by メタマネ佐藤 at 10:10| Comment(0) | メタセレクション
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