2013年03月03日

メタセレクション 累犯障害者。

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ども、メタマネです。
今日も、独断と偏見で勝手に書籍紹介をさせていただきます。

毎週、わりとこの書籍紹介を楽しみにしてくださっている方も多いようで。
徒然に書き綴ることよりも、こちらの反響の方が多いように感じております。

さて。

本を読むことの醍醐味のひとつは、「自分の知らなかった世界を教えてくれる」ということにあると思うのですが。
そういう意味から言えば、過去に読んだ本の中でも、最大級の驚きを与えてくれたのが、本日紹介する本と言っても良いでしょう。

山本譲司 著 「累犯障害者」 です。

タイトルからして、奥が深そうな感じのする本ですよね。
これは、かつて衆議院議員として選ばれながら、秘書給与の流用問題で獄中生活を送った著者、山本譲司氏による体験談を端緒にした、驚くべき刑務所の実態と、罪を重ねる障害者の現実に追った、非常に社会的意義の高いルポルタージュです。

まずは、こんなデータからご紹介。
我が国では、知的障害者として約45万9000人が把握されている(平成18年障害者白書より)。

筆者は、この知的障害者の総数が、「非常に疑わしい」と述べています。
人類における知的障害者の平均出生率はおよそ2〜3%。
およそ46万人という数値は、我が国の人口の0.36%に過ぎない。
一方、欧米各国の知的障害者の報告数は、国民全体の2〜2.5%と報告されている。
日本人には、知的障害者が生まれにくい、とする医学的データは見当たらない。
とすれば、本来ならば240万人から360万人の知的障害者がいてもおかしくないはず。

では、残りの人々はどうなったのか?
多くの場合、それらは軽度の障害であり、健常者として生活している、といいます。

しかしながら、どうしても他の人には“ついていけない”。
いくら真面目に取り組んでも要領が悪く、仕事も長続きしないことが多い。

社会のなかで取り残され、福祉の網にもかからず、行き場を失う障害者たち。

そして、衝撃的事実。
受刑者のうち、およそ3割は知的障害のある人々が投獄されている、という。

彼らの多くは、ごく軽微な罪で投獄されており、前科10犯以上の累犯者が50%を越える。
年をとり、要介護状態となっている受刑者も多い。
社会に居場所がない人々にとって、刑務所こそが安住の地であった。
山本氏は模範囚として、そんな彼らの介護を主に担当していた、というのです。

この本は、インパクトの強い章立てがいくつもなされており、それを並べるだけでも「私たちの知らない世界」の深さを教えてくれます。

序章 安住の地は刑務所だった―下関駅放火事件
一章 レッサーパンダ帽の男―浅草・女子短大生刺殺事件
二章 障害者を食い物にする人々―宇都宮・誤認逮捕事件
三章 生き甲斐はセックス―売春する知的障害者たち
四章 ある知的障害者の青春―障害者を利用する偽装結婚の実態
五章 多重人格という檻―性的虐待が生む情緒障害者たち
六章 閉鎖社会の犯罪―浜松・ろうあ者不倫殺人事件
七章 ろうあ者暴力団―「仲間」を狙い撃ちにする障害者たち
終章 行き着く先はどこに―福祉・刑務所・裁判所の問題点

深い。
深すぎる。

しかも、これが紛れもなく現代日本社会の現実なのだとすると、あまりに“知らない”ということが恐ろしい。
あまりにも冷たい日本社会の現実を、突きつけられたような思いがしました。

なぜこうなってしまうのか。
私は、障害に対する無意識の偏見や差別が根底にあるためではないか、と思います。

障害者が努力している様子は、美しいドキュメンタリーとして語られる。
一方で、障害者が犯罪を犯す、ということについては、触れることさえ禁忌であるかのように感じてしまう。
そうした偏見に迎合し、「美しく生きる障害者」観を押し付けるマスメディア。
福祉や医療に携わる者を、“聖職”のように祭り上げることも、同質の偏見によるものだと私には感じられます。

そうやって、都合のいい部分しか見ないから、こうした事態が起きても殆ど周知されない。
しかし、それが本当の意味での障害者差別であると、私は改めて言いたいのです。

そういえば、乙武さんも言われてましたね。
「障害者をの“害”をひらがな表記に変えろ、という気遣いが気持ち悪い」と。
私の無知がそうさせるのかもしれませんが、想いは同じです。

いずれにせよ、福祉に身を置く者として、「無知は許されない」と感じる内容ばかり。
都合の悪いことを、なるべくみないようにしてきた結果が、弱い立場の人々を、さらに追い詰めているとしか思えない。

正義とは何か。
福祉とは何か。

福祉職、必読の書と言っても良いのではないでしょうか。
posted by メタマネ佐藤 at 09:08| Comment(0) | メタセレクション
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